葬儀のかたちは、今や一通りではありません。さまざまなかたちの葬儀が提案されるようになり、またご家族の方から自分たち（や故人）の希望する葬儀を提案できるようにもなりました。

そんな「新しい葬儀のかたち」の中から「無宗教葬」について取り上げます。

無宗教葬とは一体どのような葬儀なのか、一般葬などとはどこが違うのか、メリット・デメリットについて詳しくご紹介いたします。

無宗教葬とはどんな式？

「無宗教葬」とは、宗教にとらわれない葬儀の形態をいいます。

宗教への帰属意識が薄れたと言われる現在であっても、人が亡くなった場合、多くの人はなんらかの宗教にのっとった葬儀を選びます。よく言われることですが、「日本人はお正月には神社に行って、クリスマスを祝って、葬儀は仏教で行う」などのように、普段は特段信心などをしていない人であっても、当たり前のように特定の宗教にのっとった式をしようとします。

しかしそのようなやり方ではなく、宗教者を呼ばず、無宗教で葬儀を行いたいという人もいます。そのようなときに選ばれるのが、「無宗教葬」なのです。

特定の宗教に依る葬儀は、ある程度の個性などはあるものの、基本的には共通の流れをとります。

しかし無宗教葬の場合、そのような「共通の流れ」がありません。そのため非常に自由なかたちをとります。また「規模」に関しても同じことがいえます。非常に小規模な葬儀を行う場合もあれば、大々的に行うこともあります。

そのため、無宗教葬は非常にオリジナリティのあふれる葬儀となります。

無宗教葬のメリットについて

無宗教葬にはいくつかのメリットがあります。

そのなかでも大きいのが、「故人の意志やご家族の希望を最大限反映することができる」ということでしょう。

無宗教葬の場合は宗教による縛りがまったくないので、故人やご家族の希望を詰め込んだ葬儀にすることができます。たとえば葬儀会場をガーデンスタイルの花で埋め尽くしたり、故人が愛した明るい音楽を奏でてお見送りをしたり……といったことが自由にできます。

もうひとつ非常に大きい点として、「お布施などが必要ない」というメリットが挙げられます。

お布施（やそれに類するもの）の出費は非常に大きく、葬儀費用の総額の4分の1程度を占めます。50万円以上かかることも珍しくありません。しかし無宗教葬の場合、そもそも宗教者を呼ばずに葬儀を行うわけですから、この「お布施」の金額がまるまる浮くのです。このため、「葬儀にお金をかけてほしくない」と考える人の場合、自らの意志で無宗教葬を選択することもあります。

特に「参列する人が非常に限られているので、大きな葬儀をする必要はない」という人の場合は、無宗教葬の選択が有効です。葬儀会社が提案する「最低価格のプラン」では、実際にはそこにお布施費用などがのることになりますが、無宗教葬の場合はこの「最低価格」にほぼ等しい数字での葬儀が可能となります。

「引っ越しを繰り返したため、菩提寺が分からない」「宗教への帰属意識が極めて薄く、先祖代々のお墓がどこにあるのか不明である」「家族との縁が薄く、たどるべき血縁がいない」という人もいることでしょう。少子高齢化が進んだこと、「生まれた土地で親の仕事を引き継ぎ一生を終える」という人生の選択肢を選ぶ人が少なくなったことなどから、このような環境にある人は決して珍しくないかと思われます。

このような場合でもご本人が希望すれば菩提寺を探したり、またご僧侶派遣便などを利用したりすることもできないわけではありませんが、そもそも宗教への帰属意識が極めて薄い人の場合はそれもおっくうに感じられるかと思われます。

そのような場合も、無宗教葬ならば安心です。

無宗教葬ならば菩提寺が不明でも挙げることができます。またお墓の問題が出てきたときも、新たに民間の墓地を探したり、樹木葬や海洋葬などの選択肢を選んだりすれば問題ありません。

 

無宗教葬のデメリットについて

メリットの多い無宗教葬ですが、デメリットもあります。

それについてみていきましょう。

「参列する人が少ないから無宗教葬を行う」という場合はともかく、「参列する人がたくさんいるにも関わらず無宗教葬を行う」とした場合、周りからの反対が起きる可能性があります。「きちんとしたお見送りではない」として、ご親族などから反対意見が出ることもあるでしょう。そのため、ご親族などを招いて行うある程度大規模な無宗教葬を希望する場合は、周りの人の理解が必要です。理解が得られない場合は、説得する必要が出てきます。ここで強行してしまうと、後々まで引きずりかねません。

無宗教葬のメリットとして「非常に高い自由度」が挙げられますが、その分、無宗教葬には「決めなければならないこと」が非常にたくさんあります。特に確固たる「希望の葬儀の形態」があればこの傾向は顕著になります。場合によっては「希望する葬儀を実現してくれる葬儀会社選び」から慎重に行う必要が出てくることでしょう。

無宗教葬の葬儀で、かつ希望とする形態がある場合、打ち合わせだけで1日程度かかることも珍しくありません。「無宗教葬であり、簡素な式を希望している」というケースならばあまり問題はありませんが、「無宗教葬であり、大規模で、明確な希望の形態がある」という場合は、生前からしっかり打ち合わせをしておくことを強くおすすめします。

上記でも述べましたが、宗教に依る葬儀にはある程度の「流れ」があります。葬式は非日常的なものではありますが、それでもある程度年齢を重ねた人の場合は、やはり「葬式というものはこういう流れで行われるのだ」といった認識を持っています。

しかし無宗教葬の場合は流れも何もかも異なります。このため、参列者を戸惑わせる可能性もあります。

もしご自身やご自身の家系が菩提寺を持っており、かつその菩提寺の敷地にお墓を持っているということであれば、「無宗教での葬儀」に関しては慎重にならなければなりません。

無宗教葬を選択するということは、菩提寺の教義や菩提寺との付き合いを否定することに繋がります。場合によっては「うちの宗教にのっとらずに葬儀を行うのであれば、お墓に入れることができない」とされる可能性すらあります。

まとめ

無宗教葬にはメリットもあればデメリットもあります。

よく考えて選びたいですね。

無宗教葬は、自由な形式の葬儀であり、故人や遺族の意向を反映させ、その人らしい葬儀ができるものでとして人気となっています。無宗教葬を行う方は、葬儀内容や進行、納骨などの内容を葬儀社と相談しながら決めていくことがおすすめです。

 

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