香典辞退と言われたら
葬儀のかたちが多様化するにしたがって、豊川市でも「香典を辞退する」というご家庭も比較的よくみられるようになりました。
香典辞退といわれたとき、弔問客はどのように判断すればよいのでしょうか。
それについて考えていきましょう。
目次
<香典辞退の理由とは>
香典辞退の理由は、ひとつだけではありません。それぞれのご家族にそれぞれのお考えがあるため、一概に、「香典辞退の理由はこれである」と断言することはできません。
ただ、比較的よくみられる香典辞退の理由は以下のようなものです。
1.弔問客への気遣い
「葬儀に来ていただくだけでもありがたいので、香典などのお手間とお金をかけていただくのは申し訳ない」という気持ちからくるものです。
また、大規模な葬儀を希望しておらず、ひっそりと、できるだけ人の手を煩わせることなく葬儀を進めたいということで、香典辞退のご意向を示されるご家族もいます。
2.故人と喪主の関係が薄い
「故人は天涯孤独な人だった。ほかに連絡先がなかったとみえて、子どものころからまったく会ってもいない甥である自分に連絡がきた。一応血はつながっているので喪主にはなるが、関係は薄く、伯父にあたる故人の交友関係もまったく知らない」などのように、喪主と故人の関係が極めて薄い場合も、香典辞退となるケースがみられます。
故人との付き合いがまったくなかったため、故人の知人・友人などから香典を受け取ったとしてもそれがどのような関係性なのかがわからないということ、また積極的には故人の生前の様子に触れたくないことなどが理由となります。
3.香典返しが面倒である
香典を受け取った場合、相手が「香典返しを辞退する」という意向を示していたり、また「子どもが小さいので遺児の育成に使う」あるいは「故人の希望通り、慈善団体に寄付する」などのような選択肢を選んでいたりした場合を除き、「香典返し」が必要になります。
現在は「即日返し」として、香典を受け取ったその場で平均的な金額(3000円程度)の香典返しを渡すやり方が主流ですが、それでも、相場よりも多い金額を頂いた場合は香典返しを行う必要があります。香典返しは金額に応じたものを選ばなければなりませんし、後日弔問に訪れた人から香典を頂けばその香典返しも必要となります。
このようなことを面倒であると考える人は、香典辞退の意向を示すでしょう。
また、「今後自分も同じようにしなければならないのがやや煩雑に感じる」ということで、香典辞退をとする人もいます。
※「香典返し」の「香典」は厳密にいえば仏教用語にあたりますが、代わる言葉がないため、ここでは宗教を問わず「香典返し」という表現を使っています。
どのような理由であれ、弔問客がその理由を聞くことはできません。
<香典辞退の意向が示された場合の対応方法>
では、香典辞退の意向を示された場合、弔問客はどのように判断すればよいのでしょうか。
1.基本的には贈らない
「香典辞退」と言われた場合、弔問客はそれに従うのが原則です。弔意を示すための香典は、あくまで故人とご家族のためにお渡しするものであって、「弔意を表すという気持ち」を満たすために贈るものではありません。そのため、ご家族から「香典辞退」の意向が示されていたのであれば、香典は渡さないようにしましょう。無理にお渡ししても、ご家族に香典返しの手間をかけさせたり、心労を与えたりするだけです。相手の気持ちに添うことがなによりも重要です。
2.供花・供物を贈る場合は必ず確認を
「どうしても弔意を示したい」「とても近しい親戚であった」「故人から、『私が死んだら花を贈ってほしい』と言われていた」などのような場合は、香典の代わりに、供花や供物を贈ることを検討してもよいでしょう。ただし、香典辞退の意向を示されているご家族の場合、供花や供物も受け取らない……としていることが多いといえます。供花・供物にもお返しは必要ですし、場所もとります。
そのため、「供花・供物を贈りたい」と考えている場合は、まずは葬儀会社に確認をしましょう。葬儀会社の方で、「ご家族が供花・供物を受け取るつもりがあるかどうか」を把握しているはずだからです。
「亡くなったのが自分の父親であり、喪主は実兄が務める」などのように、「故人の家族」の立場ならば喪主に直接尋ねてもいいかもしれませんが、遠い立場の場合、ご家族に直接確認をするのは控えるべきです。ご家族は非常に忙しく、また精神的に余裕がない状態だからです。
ここで、「供花・供物も辞退する」と言われた場合は、供花・供物・香典のいずれも贈ってはいけません。
3.弔電を送る
「供花・供物・香典は辞退されたが、弔意を示したい」「香典辞退の知らせは受け取ったが、そもそも遠方にいて体も壊しているので葬儀に参列することができない」という場合は、弔電を送ることを検討してもよいでしょう。
お返しが必要な供花・供物・香典とは異なり、弔電の場合はお返しが必要ありません。お返しをするとした場合も、お手紙やハガキなどでのやりとりだけです。また、供花・供物とは違い、場所もとりません。
そのため、「供花・供物・香典辞退」としていても、弔電は受け付けている……というケースもあります。この場合でも確認は必要ですが、供花・供物で香典の代わりを、と考えるよりは難易度は低いといえるでしょう。
「香典辞退」の意向を示された場合、「本当は受け取りたいが遠慮しているだけだ」と受け取ってはいけません。
故人やご家族が、しっかりとした理由をもって、「香典辞退」の意向を示していることが非常に多いからです。自己満足で故人・ご家族の気持ちをざわつかせないためにも、「香典辞退」とされた場合は、原則としてそのご意向に従うようにしてください。